


ATR Levelsとは
ATR Levels は、ATR(Average True Range=平均変動幅)からその日の到達しやすい上限・下限価格を計算し、チャート上に水平ラインとして描くインジケーターです。
スクリーンショットのように、たとえば次のようなラベルで表示されます。
- ATR(t) res … today の想定上限(Resistance)
- ATR(t) sup … today の想定下限(Support)
- ATR(y) res … yesterday の参考レベル(前日の到達上限の目安)
ピボットのような固定比率ではなく、ボラティリティ(ATR)に応じて毎日距離が変わるのが特徴。
「今日この銘柄が動きやすい幅」の目安を、開場直後から可視化できます。
インジケーターの概念
多くの実装は、次の考え方でラインを出します(詳細はインジの仕様により微差あり)。
- 基準価格(Anchor):当日の始値・前日終値・セッションオープンなど
- ATR期間(N):通常 14(デイリーが定番)
- 倍率(k):1.0 を基準に 0.8〜1.5 で調整
Projected High(上限) ≒ Anchor + k × ATR(N)
Projected Low(下限) ≒ Anchor − k × ATR(N)
前日レベル(ATR(y))は、昨日の Anchor と ATR から算出した到達目安を意味します。
パラメーター設定&解説

| 英文(パラメーター) | 現在値 | 日本語 | 解説 |
|---|---|---|---|
| ATRPeriod | 10 | ATR期間 |
平均真の値幅(ATR)を計算する本数。 短いほど相場変化に敏感でライン幅が日々変わりやすい。長いほど滑らかで安定するが最新変化に遅れやすい。 目安:デイトレ/日足ATR基準なら 10〜14 から検証。 |
※本パラメータは「到達しやすい距離」を決める指標です。方向判定はMAや価格アクションなど別のフィルタと併用してください。
インジケーターの基本的な使い方
- セッション前にラインを作成(ATR Period=14 / k=1.0 から開始)。
- 上位足の方向(MAの傾き・直近の高安更新)を確認。
- エントリー前にチェック:
- 現在値はラインからどれだけ離れているか?
- ATR増加中か減少中か(ボラ指標で確認)
- 重要指標の予定はないか?
すぐ使えるトレード戦略3選
① オープンドライブ→ATR上限タッチ(順張り)
- 条件:寄り後に素早く方向が出て、ATRが増加。
- エントリー:直近高値(安値)ブレイク確定で順張り。
- 利確:第一目標を ATR(t) res / sup、残りはトレーリング(例:ATR×1.0)。
- 注意:目標ラインに近い所からの新規は避ける(伸びしろが小さい)。
② ATR上限/下限での“一発否定”反転(短期逆張り)
- 条件:早い時間帯に ATR(t) res/sup にタッチ→長いヒゲで否定、かつ ATRが頭打ち。
- エントリー:否定足の確定で反対方向のスキャル。
- 利確/損切:ミドル帯やVWAPまで / ヒゲ先外にタイト(R≥1.5確保)。
- フィルタ:上位足が明確トレンドなら逆張りは控えめに。
③ 2段伸び(1.0×ATR到達後の続伸)
- 条件:前場で 1.0×ATR 到達、押しが浅く 高値/安値を再更新。
- 運用:次の目安を 1.3〜1.5×ATR に設定し、分割で伸ばす。
- 管理:押し戻しが 0.5×ATR 以内なら強い。超えたら失速と判断。
よくある失敗と回避
- ライン到達直前で追いかける → 伸びしろが乏しく逆行しやすい。ブレイクなら“抜け+定着”を待つ。
- ボラが極端に低いのにkを固定 → 到達しづらい。k を 0.8 前後に落とす。
- ニュース跨ぎ → ATRレベルを容易に飛び越える。前後は見送り。
- 方向無視の逆張り → 上位足トレンド中の逆張りは減らす。MTFで整合を取る。
ほかのレベル系(Pivot等)との違い
- Pivot:価格比率ベースで一定。
- ATR Levels:ボラティリティ連動で毎日距離が変わる。
→ その日の「走りやすさ」を反映し、目標設定・利確設計に使いやすい。
メリット / デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| その日の“現実的な可動域”が一目でわかる | 強いニュースやトレンドでは簡単にオーバーシュート |
| 利確目標や分割利確の基準に最適 | 方向は教えてくれない(別のトレンド判定が必要) |
| ボラに連動するため静かな日/荒い日でも機能 | パラメータ(k, Anchor)の設計ミスで当てにならない |
エントリー前のチェックリスト
- 上位足の方向と構造は?
- 目標ラインまでの**距離(残りのR)**は十分?
- ATRは増加/減少どちら?
- 重要指標の前後ではない?
- R≥1.5 を満たす損益設計になっている?
まとめ
- ATR Levels は、ATRから到達しやすい当日の上限・下限を引き出すラインインジ。
- 順張りの利確目標や逆張りの否定ポイントとして使うと再現性が高い。
- パラメータは ATR14 / k=1.0 を起点に、ボラで 0.8–1.5 にチューニング。
- 成功のカギは 上位足の方向+ATRの増減+距離(R) の3点同時確認です。










