ADMとは、
FXや株式市場において、トレンドが発生しているかどうか、そしてそのトレンドがどれだけ強いのかを判断するのは、勝率を高めるうえで非常に重要です。
そこで活用されるのが「ADX(Average Directional Movement Index)」というテクニカル指標です。ADXの基本構造、計算方法、シグナルの読み解き方、さらに実践的なトレード戦略までを詳しく解説していきます。
トレンドの「有無」と「強さ」を数値化する指標
ADXは、J. Welles Wilder氏によって開発されたテクニカル指標で、トレンドの「方向」ではなく、「強さ(勢い)」に特化して分析します。RSIやストキャスティクスのようなオシレーター系とは違い、買われすぎ・売られすぎを見る指標ではなく、「トレンド相場」と「レンジ相場」を見分けるために使われます。
ADXの構成要素と仕組み
ADXは主に以下の3つの要素から構成されています:
- +DI(Positive Directional Indicator):上昇方向の力の強さを示す
- -DI(Negative Directional Indicator):下降方向の力の強さを示す
- ADX本体:+DIと-DIの差の平均を平滑化したラインで、トレンドの「強さ」を数値化して表示
ADX値の目安
ADX値 | 解釈 |
---|---|
0〜20 | トレンドなし(レンジ相場) |
25〜40 | トレンド発生中(明確) |
40〜50以上 | 強いトレンド継続 |
※ADXは「強さ」を示すのみで、上昇トレンドか下降トレンドかは+DIと-DIの関係で判断します。
ADXの計算方法(簡易解説)
初心者向けに、ADXの計算ステップをシンプルに説明します。
- +DI / -DIの計算
→ 前日との高値・安値の差から+DM(上昇方向)・-DM(下降方向)を計算
→ TR(True Range)で割り、移動平均をかける - DX(Directional Movement Index)の算出
→ DX = (|+DI – -DI| ÷ |+DI + -DI|) × 100 - ADXの算出
→ 一般的にDXの14期間移動平均をとったものがADX
ADXの見方・トレード判断|シグナルの読み方
ADXは以下のような判断に使えます:
▶ ADXの数値変化
- 25を上抜ける:明確なトレンド発生の兆候
- 40以上で維持:強いトレンド継続中
- 40以上から下降:トレンドの終焉・弱まりの可能性あり
▶ +DIと-DIのクロスで方向判断
- +DIが-DIを上抜け(ゴールデンクロス):買いシグナル
- -DIが+DIを上抜け(デッドクロス):売りシグナル
👉 特にADXが25以上の状態でクロスが発生すると、信頼性の高いエントリーサインになります。
ADXを活用した実践的トレード戦略3選
1. トレンドフィルター戦略(順張り)
ADXが25以上でトレンド発生中と判断し、+DIと-DIのクロスでエントリー判断を行います。

- ADX25以上 + +DIが-DIを上抜け → 買いエントリー
- ADX25以上 + -DIが+DIを上抜け → 売りエントリー
補助的に、移動平均線・MACD・一目均衡表などと併用することで精度がUPします。
2. レンジ相場での逆張り判断
ADXが20以下で低下中、または横ばいになっている場合は、トレンドのないレンジ相場である可能性が高く、逆張りが有効です。
このときは、RSIやCCI、ストキャスティクスと組み合わせて、買われすぎ・売られすぎを判断すると優位性が増します。
3. トレンド終焉の兆候を察知
ADXが40以上に達した後に下降を始めたときは、トレンドの勢いが弱まり、反転や調整のタイミングを示唆している可能性があります。
このような場面では、MACDのダイバージェンスや**ローソク足の反転パターン(包み足、ピンバーなど)**と組み合わせることで、精度の高い反転ポイントを捉えることができます。
ADXのストップロスと利確設定の考え方
✔ ストップロス設定
- +DIと-DIが再度クロスしたとき(シグナルの無効化)
- 直近の高値/安値を少し超えたポイントに設定
✔ 利確ポイント
- ADXがピークを打ったと感じたタイミング
- +DIと-DIが再びクロスし、トレンドの反転兆候が見えたとき
ADXを使いこなすための注意点とコツ
1. トレンドの方向は+DI/-DIで判断
ADX自体には方向性はありません。+DIと-DIのどちらが上にあるかでトレンドの方向を判断します。
2. 遅行性に注意
ADXは移動平均を使っているため、急激な値動きには遅れて反応します。直近のエントリーポイントを逃す可能性もあるので、他の先行指標と併用しましょう。
3. ADXが低くても動かないとは限らない
ADXが20以下=完全に動かない、ではなく、「方向感がない」だけで、レンジ相場での価格変動はあり得ます。その場合は逆張り戦略が有効な局面も多く存在します。
4. 期間設定は柔軟に調整する
- デフォルトは14期間が一般的
- 通貨ペア・時間足によって最適な数値が異なるため、バックテストや検証を行い、調整することが重要です。
まとめ|ADXを使いこなして戦略を最適化しよう
ADXは、トレンドの「有無」や「強さ」を定量的に把握できる非常に優れたテクニカル指標です。順張りにも逆張りにも対応でき、+DI/-DIの関係性を加味することで、より高度なトレード判断が可能になります。
さらに、他のテクニカル指標(MACD、RSI、移動平均線など)と組み合わせることで、エントリーや決済の精度が向上し、トレード全体の勝率アップにも貢献します。
ADXを正しく理解し、柔軟に活用することで、無駄なエントリーを減らし、より合理的で利益の残るトレードが実現できるでしょう。